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「もうここで大丈夫ですよ、ありがとうございました」
エントランスに入った所で足を止め自分から手を離すと、振り向いた長瀬さんにニッコリ笑ってそう告げた
するとそんな私に長瀬さんもニコリと微笑んで……何故かまた私の手を取りスタスタと歩き始めるではないか
「え!あっ、ちょっと待っ……」
そして半ば引きずられる様にしてインターホンの前まで来ると、笑顔のまま「押せ」と無言で私に訴えて来る
ん?とは思うものの大人しく従えばまたポンと頭を撫でられ、だけど私がインターホンを押すタイミングでスっと離れて行った
その姿を目で追いながら頭には小さなハテナがポコポコと浮かんでくる
が、その時スピーカーから先生の明るい声が聞こえてきてハッと意識を戻す
「わぁ~純恋ちゃんいらっしゃい
もうね、待ちくたびれてどうしようかと思ってたとこだよ、さぁ、早くおいで~」
スピーカーから聞こえる何とも楽しげな声、その声につられ自然と私の頬も緩む
「ふふ、今行きますね」
あれからも先生は変わらず私に接してくれていた
いつも明るくそして何より優しくて
穏やかで話が面白くて、時々ちょっと表現が変だったりするけど、でもいざという時にはすごく頼りになる、そんな先生のままだった
(長瀬さんが私にとっての王子様なら、先生は全ての女子の王子様と言ったとこかな?)
ほわんとした先生の雰囲気に心が軽くなりながら空いたドアから中へと入ろうとしたとこで、パッとまた手を掴まれ長瀬さんが隣に並んだ
「何が待ちくたびれちゃっただ
相変わらずヘラヘラして気持ちわりぃ奴だ」
(あ、始まった)
隣から聞こえた声にチラッと長瀬さんを見ては小さく苦笑いを零す
そう、少し前まではこういうブラックな発言に驚いていた事も多々あったけど、最近ではすっかり慣れたもんだ
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