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「では確かに原稿お預かりしました
それではまたご連絡させて頂きますね」
玄関先でそんな言葉を交わしたのは長瀬さんと別れてわずか10分後
そして早くも今私は帰りのエレベーターの中、手には封筒に入った原稿とそしてもう一つ
「ハイお土産
あ、長瀬君にはあげなくていいよ、純恋ちゃん一人で食べてね」
そう言って渡されたチョコレートケーキの入った箱だった
帰り際に手に持たされすぐに中身に気付き返そうとしたけど受け取ってもらえず「じゃあね、長瀬君が怖いから帰りはここでね」と言われドアを閉められてしまった
仕方なく「ありがとうございます」とドア越しに伝えたが、これは嬉しいような困ったような……
(だって長瀬さん「いらない!」って言い張りそうだもん)
この先の展開を予想しては誰もいないのをいい事に溜め息を零す
だけどすぐにブンブンと首を横に振り、もうなるようになれと開き直る
(だってチョコレートケーキに罪はない!)
「よし!」
一階に到着し気合いを入れ直すと原稿と箱を抱え長瀬さんの待つ車へと戻る
「さて、どんな一声が飛び出すのかな?」
そんな独り言を呟くと何だか可笑しくなってきて、早く長瀬さんの反応が見たくて気づけば小走りになっていた
マンションを出て真っ先に目に飛び込んできたのは車に凭れて立つ長瀬さんの姿
「ふふ、中で待ってればいいのに」
待ちきれなかったのか少しイライラしてる様子も、そんな姿さえ愛しくて思わず駆け出しまう
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