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そんな私をいち早く見つけた長瀬さんの顔が一瞬で笑顔に変わったのがわかった
「お待たせしました」
笑顔で駆け寄った私に「遅い」と一言
そして抱えていた原稿を取ろうとして……
(あ、見た)
視線がケーキの箱でピタリと止まった
「何だそれは」
私から原稿を奪いながらも視線は鋭く箱に向けている
訝しげに見つめてる様子からこの箱の中身が何であるかはもう分かってるだろう
「お土産頂いちゃいました
帰ったら一緒に食べましょうね」
敢えてニコッと笑って言うと
「いらない、そんなん誰かにくれてやれ」
案の定、思った通りの反応に思わず笑ってしまった
「何がおかしい」
「いいえ、別に」
「ケーキなら他のを買ってやる
だからそれはやめろ、変な薬が入ってたらどうするんだ」
「そんなの入ってません!」
「わからないだろ」
「わかりますよ、心配ならちゃんと私が食べて証明します
だいたいケーキに罪はないんですからね
人の厚意は素直に有難く受け取りましょう」
ね、とにっこり笑いかければ、思い切り面白くないと言った顔が返って来る
だけどそこは敢えて無視で「せっかくですから後で二人で食べましょうね」と更に笑いかけた
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