『困惑 side蓮』

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『困惑 side蓮』

「あ、長瀬さんどこ行ってたんですか、探してたんですよ!」 給湯室からオフィスに戻ると後輩が俺を見るなり凄い勢いで駆け寄ってきた 「あぁ、すまん、ちょっと外してた 何?どうかしたのか?」 俺はデスクに戻りパソコンに届いたメールをチェックしながらようやくそいつに視線を向ける 「実はこれなんですけど………」 どうやら今担当してる記事の構成に行き詰まり、俺のアドバイスを聞きたかったらしい 一通り目を通し俺なりの意見を述べると「そっか!こうすればよかったのか」と大袈裟に喜ぶ様子がなんだか一瞬昔の七瀬と被った だけどそう感じた瞬間、何故かわからないがフワッと淡い感情がこみ上げて来て、思わず零れそうになった笑みを間一髪口元が緩む直前で食い止めた (ん……?何で今俺笑いそうになったんだ?) どうしてそんな気持ちになったのか自分でも謎だった (別に何も笑いたくなる様な所などなかったと思うんだが……) よくわからない感情に首を傾げていると 「……あれ、長瀬さん今笑いましたか?」 と、不思議そうな顔で後輩に言われハッと顔を上げる 「あ?んな訳ないだろ! くだらない事言ってないで、ほら早く戻ってやり直せ、時間ないぞ!」 誤魔化す様に顔を逸らすとパソコンに向き直りカチャカチャとキーボードを叩き始める 「ヤベ!そうですよ、時間ないんだった あ、長瀬さんありがとうございました!」 ペコッと頭を下げバタバタと忙しなく戻っていく後輩を、チラッと横目で見ながら再びパソコンに視線を戻す そして俺は周りに聞こえない様に小さな溜息を吐き出した
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