『始動 side一之瀬』

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『始動 side一之瀬』

「はい、よろしくお願いします では後ほどお伺いしますね」 松井編集長からの電話を切り、俺は無意識にフッと笑みを零していた 実は近々俺の小説の発売日に合わせサイン会が催される そしてその後、今大人気の若手イケメン作家さんと俺とで対談の企画が決まっていた……というかつい先程決定したのだ サイン会はともかく俺が対談……!?と最初は断ったのだが、松井編集長直々に訪ねてきて熱心に頭を下げられてしまい渋々OKする事に…… と言うのは嘘で、 『受けてくれたらずっと七瀬と一緒にいられます、この件は全て七瀬に任せますから』 この一言で簡単に「やります!」と返事をしてしまったわけだ ………簡単すぎるだろ、と思いながらも純恋ちゃんとの時間が増える事は何より嬉しい 俺にとってはまずそれが最優先事項になるくらいに大事な事なんだよ 純恋ちゃんと一緒にいれるなら俺は大抵の事は我慢できる……と思う 例え何かの罠だとわかっていても、それでも純恋ちゃんといられるならその罠に敢えて飛びこんで行くだろう それ程に純恋ちゃんが大好きだ まぁ、もちろん罠はギリギリで回避してやるけどね 当然純恋ちゃんも危ない目には遭わせない、俺がちゃんと守るからご心配なく…… そんな事を思いながら俺はこれからの予定を考えていた 今日15時から純恋ちゃんの勤める出版社にてそのサイン会とやらの打ち合わせが行われる さっきの電話はその最終確認の為に松井編集長からかかってきた電話だったのだ
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