第13章 二人で眠れたら

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俺たちはリビングの座卓の前の床に並んで正座させられていた。正確にはありさが『正座しろ』って言ったわけじゃない。しかしまぁこの場合、常識的に考えて正座だろ、とは思う。 何と言ってもありさがドアの外にいるってわかっているのに最後までがっつり、心置きなく満喫してしまった。菜摘は勿論悪くない。全面的に俺が悪い。誰があの場にいてもそう考えるだろう。 なのに、ありさは俯く菜摘をひたと見据え、半泣きで訴えかき口説き、俺の方は全くもって一顧だにしない。 「菜摘、酷いよあんな…、あたしの気持ち知ってるくせに。どんなに菜摘のこと好きか、知らないはずないよね?なのに何で…あたしが聞いてるって知りながら。しかもユキトなんかと」 …何故『なんか』? 「菜摘とは別れるつもりでいたんじゃないのか?」 俺は思わず口を挟む。 「この部屋を出て行くことは納得したんだろ?もう元の友達に戻るってことで了承したんだと思ってた」 そこら辺、そう上手くいくかなぁと内心懐疑的ではあったのだが、敢えてそう言ってみる。もしかしたら、別れることで合意してたのにこうなると気持ちがリバウンドした、ってだけかもしれないし。 ありさは物凄い目つきで俺をキッと睨んだ。 「何でそういうことになるのよ。別々に住んでも関係は変わらないよって約束したじゃん(知らん!)。菜摘があたしから少し距離を置いて、気持ちを整理する時間が欲しいんだと思ったのに。菜摘の気持ちが固まるまでいつまでも待つつもりだったのに。…ううん」 座卓を挟んで身を乗り出すようにして、菜摘の目線を捉えようと顔を近づける。 「今でもそのつもり。あたしはいくらでも待てる、菜摘のこと。だからユキトなんかとは早く別れて。一時の気の迷いなんだよね? ユキトに好きだって迫られて同情して応じただけなんでしょ?菜摘が優しいからってつけ込んで」 「酷い」 あまりの言いたい放題に俺は呆然と呟いた。大体以前だったら何を当てにするにしても、菜摘に優しさだけは求めなかっただろう。最強に無情の女だと思ってたから。勿論現在ではこの上なく優しい奴だって身をもって知ってるけど。 ありさの顔がわずかに上気し、言葉が熱を帯びる。 「そもそも菜摘、あたしとの関係が本気じゃなかったなんてことないでしょ?あんなにすごく感じてたじゃない、いつも。身体震わせて、声出して。菜摘、あたしとするの、好きだったでしょ?」
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