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「お前、いい加減にしろよ」
俺はたまりかねて口を挟んだ。とても聞くに堪えない。
「そんな終わったこと持ち出すなんてフェアじゃないだろ。しかも二人の間のこと、他人の俺の前でわざわざ…。菜摘に失礼じゃないのか」
本当はわかってる。ありさがあんなことを言い出したのは菜摘を辱めるためじゃない。
ターゲットは俺だ。俺に二人の間に何があったか改めて思い起こさせるため。だからと言って、俺の前でこんな話をされて菜摘がどんな気持ちか考えると…。
ありさはちょっと怯んだ。菜摘に嫌われたら元も子もないからな。とりあえずこいつがまだ菜摘に未練たっぷりな事実は判明した。そうはいくもんか。
俺はありさの隙を突いて反撃した。
「大体お前、菜摘とそうなった時最初にちゃんと本人の意思確認したのかよ。大方こいつが弱ってる時に、慰めるのに紛れてどさくさに押したんだろうが。本当に相手のことが好きなら、ちゃんと落ち着いて冷静な時に真っ向から申し込むのが筋ってもんだろ。断りづらい時や拒否できないような時を狙って周りを固めて逃げ出せないようにするなんて」
一気にまくし立てて、ちょっと言い過ぎたかな、と内心反省する。ありさも悪意があってそうしたわけじゃないのはわかってる。ただ欲しいものを手に入れようと思い立つと、手段を選ばないがむしゃらな性格が前面に出てきてしまうだけなんだ。何てったってブルドーザーみたいな奴なんだから。
案の定、おそらく痛いところを突かれたありさは、むきになり本気で言い返してきた。
「そんな風に自分は菜摘のため、菜摘の気持ちを考えてますみたいな顔してるけどさ。じゃあ自分の方はどうなのよ、ユキト。菜摘のことほんとに理解して配慮できてるって言える?」
完全に矛先がこっちへ向いた。黙り込んで俯いている菜摘が一方的に責められてるのを見るよりは勿論いいけど。
「できてるかどうかはわからないけど。そうしたいとは思ってる」
ありさの目が底光りしたように見えた。
「どうだか。本当にちゃんと想像力働かせたんなら、男の身体に抱かれることを菜摘がどう感じるか、わかりそうなもんでしょ。最低の連中に酷いことされて…。あんただってあいつらと同じ男なんだから。そういうことしたら、菜摘に思い出させてるに決まってるじゃないよ。どうして気づかないの?」
俺は不意を突かれた。何故か口ごもってしまう。
「…あんな奴らと俺は違うよ」
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