第13章 二人で眠れたら

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ありさは俺を見下ろすように腕を組んだ。 「それはわかってる。あんたはあんなカスみたいな連中とは違う。とにかく、精神的にはね。でも、身体はあいつらと同じ男でしょ。それは否定できないよね。あんたがすることって、幾ら菜摘のことが好きでも、あいつらがこの子にしたことと基本的に一緒じゃない。気持ちが違ってたってすることはそんな変わんないんだから…。菜摘に思い出させるに決まってるでしょ。何でそんなこと気づかないの。それとも気づかないふり?」 俺はガン、と正面から殴られたような気になった。すごくダメージを受けたことは確かだ。俺は辛うじて声を出し、反論する。 「そんなことない。…同じなわけなんか」 絶対ない。こんなに菜摘のこと好きで大切なのに、あんな奴らと一緒なんて。そんなこと…。 あるわけない。 ありさは冷酷に突き放した。 「同じだよ。男の身体で上に乗られて、男の手で触れられて…。菜摘はきっと思い出して怖い思いしてるのに、必死で我慢してるんだよ。気づかないのは、気づいちゃうともう菜摘とできなくなるから?だったら、あんたもあいつらとそんなに言うほど変わらないよね。実は単に菜摘としたいだけじゃん」 …そんなこと…。 俺は頭を抱えてうずくまった。気づいてなかった?…違う。勿論、気づいてた。とっくに。 俺が思わず力を込めて上から抑えつけると蒼ざめた顔で身体を引きつらせた。絶対に声を出すまいと必死で歯を食いしばって耐えていた。時折現れるあれは、勿論俺にされることが彼女に過去を思い出させたからに決まってる。 それに、夜中のあの泣き声。以前はよくうなされてたって聞いてはいたけど、俺がリビングに泊まり込むようになってからはずっと実際耳にしたことがなかった。そう、どこかでわかってた。悪夢が復活したのは俺とするようになってから。はっきりとそうだ。俺の身体があいつらの酷い記憶を菜摘に呼び覚ました。 俺の存在そのものが菜摘を怖がらせ、脅かしてたんだ。 悪意なんてなくても菜摘にとっては同じだ。恐怖の対象。忌まわしいことを思い起こさせるもの。 …俺が男だから。 うずくまって両手できつく頭を抱える俺に、ありさが勝ち誇ったように言い放つのが聞こえる。 「ほら、本当は自分でもわかってたんじゃない。知らないふりして…。今からでも遅くない。別れてあげてよ。菜摘を自由にしてあげて。悪夢を思い出させるものから」 「…別れないよ」
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