見知らぬ男

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「アニキ、いつまで待ち続ける気?」 珍しく意見してくる妹を帰宅したばかりのセイシロウが見つめた。 「マユミの記憶が戻るまで」 「それ本気なの? もう半年だよ!」 塗り終えたマニキュアに息を吹きかけ、妹が出来栄えに満足した。 「私の友だち、何人か紹介してもいいよ! 実際、アニキの事をいいっていう娘もいるんだよ」 「オレはマユミを待つ!」 「あのさぁ、純愛を気取るのも良いけど、向こうの両親から考え直して欲しいと言われたんでしょ?」 分かった口をきく妹が憎らしく見えた。 「マユミさん、アニキの事を少しでも喜んでいるの?」 「……」 「今は良いよ。でもさ、コレが五年、十年と過ぎて、アニキも引けなくなってさ……。そうなると、みんなが苦しむんだよ!」 確かにそうなのかも知れない。 「もつ会うなっていうのか?」 「それも一つの答えじゃない」 まだ大学生の妹が、今夜は特に大人に見えた。 マユミにプロポーズすると決めたのも、高校生だった妹が背中を押してくれたからだ。 美人で明るい性格のマユミは、セイシロウには勿体無いと思えるほどだった。 「まだ諦められないんだ」 「もちろん、最後はアニキの気持ちだと思うよ」 「ありがとな!」 まだ何か言いたげな目をした妹を置いて、セイシロウは自分の部屋に戻って行った。
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