2人が本棚に入れています
本棚に追加
「アニキ、いつまで待ち続ける気?」
珍しく意見してくる妹を帰宅したばかりのセイシロウが見つめた。
「マユミの記憶が戻るまで」
「それ本気なの? もう半年だよ!」
塗り終えたマニキュアに息を吹きかけ、妹が出来栄えに満足した。
「私の友だち、何人か紹介してもいいよ! 実際、アニキの事をいいっていう娘もいるんだよ」
「オレはマユミを待つ!」
「あのさぁ、純愛を気取るのも良いけど、向こうの両親から考え直して欲しいと言われたんでしょ?」
分かった口をきく妹が憎らしく見えた。
「マユミさん、アニキの事を少しでも喜んでいるの?」
「……」
「今は良いよ。でもさ、コレが五年、十年と過ぎて、アニキも引けなくなってさ……。そうなると、みんなが苦しむんだよ!」
確かにそうなのかも知れない。
「もつ会うなっていうのか?」
「それも一つの答えじゃない」
まだ大学生の妹が、今夜は特に大人に見えた。
マユミにプロポーズすると決めたのも、高校生だった妹が背中を押してくれたからだ。
美人で明るい性格のマユミは、セイシロウには勿体無いと思えるほどだった。
「まだ諦められないんだ」
「もちろん、最後はアニキの気持ちだと思うよ」
「ありがとな!」
まだ何か言いたげな目をした妹を置いて、セイシロウは自分の部屋に戻って行った。
最初のコメントを投稿しよう!