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玉子焼きを箸で切り、一口大にして舌に乗せた。
「美味しい?」
不安そうな顔で、女がずっと見つめてくる。
そんな態度が違和感あり過ぎて、私は視線をすぐに逸らした。
好きか嫌いかで言えば、この味は好きだ。
何処かで食べたことがある気もする。
もっともそれを思い出そうとすると、頭を締め付けるように痛くなってしまう。
「もっと食べていいのよ……」
心配顔の女が遠慮気味に話し掛けてきた。
一体、この女は何なのだろう。
頭が痛くて、それを誤魔化すように玉子焼きに手を伸ばした。
違和感があり過ぎて、食欲も起きない。
茶碗の白米は半分以上残っていたが、もう食べたくなかった。
「ごちそうさま。食べ終わったら言うのよ」
「ごちそうさま」
席を立ち、階段を上り、白い天井のある部屋に戻った。
女は追い掛けては来なかった。
それだけでも、心が少し落ち着いた。
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