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次の日も、また次の日も、同じ男が訪ねてきた。
チーズケーキの次は、真っ赤なバラの花束を抱えながら……。
「営業のタナカ、覚えてる? 彼、結婚するんだ」
男がいつもの様に自分の話しを始める。
何故、私にそんな話をするのか分からいのは変わらない。
「今度、ドライブに出掛けよう! 海の見えるレストラン、あそこのウニパスタを食べよう!」
「あの……」
「ウン何?」
顔を寄せて来たので、言葉に詰まった。
「マユミ?」
すると女が部屋に入って来た。
「楽しそうね!」
笑顔でベッドまで歩いて来た女が言う。
誰が楽しいのだろう。二人の存在がただただ遠くに感じてしまった。
「今度、マユミとドライブに行こうかと話してました」
「あら、良いかもね! マユミ、少し出掛けてみると良いわ」
私は窓の外に視線を動かした。
遠くで車が行き交うのが見える。
私は誰なんだろう。
「セイシロウさん、すこしこちらへ」
「いいえ、もう少しマユミと話したいです」
けれど女が頑なに頭を横に振った。
「まだ戻ってないです。だから……」
それを聞いて、男も重い腰を上げた。
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