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俺が聞き返すと、先輩は少し首を傾げた。
「通学路にないか?……逆側から登下校してんのか。校門を出て左に行くとフェンスの囲いがあるんだよ。その中には入るな」
初めて聞く話だった。フェンスの囲いは確かに見た事がある気がする。
「なんかあるんスか」
「こわいもの」
それだけ言って、先輩は片手を上げて去って行った。残された俺は、仕方がないから大人しく家に帰る――訳がなかった。
「行くな行くな」は「行け」だ。しかも怖いものがいるときた。先輩のお墨付きの心霊スポットならば行かねばなるまい。俺は中学校へ向かって歩き出した。
中学校の校門を背に左へ歩くと、五叉路に着く。十字路の交差点から、左斜め前方に向かう道があるのだ。今俺がいる、中学校へ向かう道を1として、左は中学校の側面を沿う道で2。左斜め前方は森の中へ入る道で3。真っ直ぐ前に進む道が4。右に曲がる道が5とする。フェンスは2と3の間の土地を囲っていた。
2と3の道は少し曲がりくねっているため、フェンスの中は丸っこい三角形をしている。面積は200平方メートルあるかないかで、雑木林のようになっていた。フェンス囲いの奥は森になっていて、森は森で道路の確保のためか別のもっと背の高いフェンスに囲まれている。
前に見たときは気にも留めなかったが、なぜここはフェンスに囲まれているのだろうか。どうせ後ろには森があるのだ。区切らなければひとつの森になるのに、どういう訳かわざわざフェンスで区切っている。
曰くを感じる謎だ。この、トラック1周分ほどの雑木林の中には何があるのだろうか。フェンスにしがみ付いて、中の様子を伺う。鬱蒼とした木々の合間に何やら小屋の壁のような物が見えた所で、近づいてくる小学生たちの声が聞こえ、俺はフェンスから離れた。
小屋のことは夜に入った時に探ればいい。――とは言え、1人で行くのは少し気が引けた。先輩は誘えない。そうなったらもう選択肢はひとつだ。
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