序章 雲の上

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序章 雲の上

  ふわふわと綿菓子みたいな雲の上を私は歩いてゆく。あてのない道をただ、目的なく歩いている。ここはどこ?天国?私自身、生きてるのか死んでるのかも分からない。ただ、雲の上を歩いているだけ。私は夢の中にいるのかもしれない。きっとこれは夢で、私は現実から逃れたいのだろう。雲の上を歩いたり、空高く飛ぶ夢には、今の現状から逃れたいという欲求の表れだと、大学の時に心理学の講義で学んだことをふと思い出した。私は、逃れたいのだ。この現実から、自分から、全てから。私は私であることを忘れている気がした。記憶喪失みたいに、自分が誰で、どこに住んでて、何をして生きてきたのかも。 「安奈!!」 遠くで私を呼ぶ声がして、振り返った。私は彼女を知っている。ずっと私を見守り、待っていてくれる彼女の姿を。
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