13人が本棚に入れています
本棚に追加
別に自分の過去を憐れむつもりはない。
仕方がないんだ、私が出来損ないに生まれたのが悪い。全てはそれに終息する。
『穀潰し』。
とある小さな小高い村で、私は生まれた。
そこはアルシャインとの国境近くの山沿いにあった。
別に特別資源がある訳でもない。水晶や石材が採れる山はあったが、そこまで沢山採れる山ではなかった。周りは山と森に囲まれていたので、村人はちまちまと採掘をしながら、放牧、耕作をして暮らしていた。
こんな小さな村だ。労働力の比重が、一人当たりでだいぶ大きかった。大人も子供も、皆一緒に働き、日々の生活に必要な物を自給自足していた。
私は生まれつき身体が弱く、幼い頃はあまり外に出ることが出来なかった。喘息を患っていたこともあり、少しでも無理をすると熱を出す。
小さな子供でも、家畜の番や畑の水やり、草むしりくらいなら出来る。勿論、動けるときはそれらの仕事をしていたが、他の子供達と比べたら、『何もしていない』時間が長かった。
村医者は一人しかおらず、私が激しい発作を起こす度に呼び出され、昼夜問わず振り回してしまっていた。
そんなことを繰り返すうちに、皆私にうんざりしていたのだろう。いつの間にか、私は『穀潰し』と呼ばれるようになっていた。
外に出て仕事をしていても、他の子供に石を投げられる。
「やーい、穀潰しの××!」
仕事をしくじれば、大人にも容赦なく殴られた。
「この出来損ないが!身体もおつむも出来損ないなのか!?」
父は私の治療費を稼ぐため、遠い街まで出稼ぎに行っており、殆ど村に居なかった。その為、普段の我が家は母と私の二人だけ。
最初こそ、母は私を庇ってくれていた。しかし、次第に母は憔悴していった。どうやら私の知らないところで、『穀潰し』を産んだ責任を追及されていたらしい。表では私を庇っていた母は、気が付いたら家の中で、村人に知られないように私を殴るようになっていた。
私を殴る度、『ごめんね、お母さんのせいで』と何度も呟いていた母。
だったら、殴るのを止めて欲しかった。
村にも家にも居場所が無くなり、遂に私は脱走を繰り返すようになった。
5歳にも満たない子供の脱走なんて、たかが知れていた。見付かる度に大人に殴られ、罵詈雑言を浴びせられたが、そんなことはどうでも良くなっていた。
ただ、この村から逃げたかった。
最初のコメントを投稿しよう!