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「早くゲームを再開しろ」
担任に対しても平然と命令する。……奴の目はそうしながらも担任ではなく長谷をまっすぐに睨みつけていた。
とんだ負けず嫌いだ。
「人間ごときに俺が屈すると思ったら大間違いだ。いずれ貴様らは我の足元にひれ伏す定めなのだから」
埒があかないと見たのか、とうとう担任が保健委員を呼んだ。
「佐藤!」
……保健委員は俺だった。なんてことはない。
クラスには佐藤さんという名字の女子がいる。
彼女が保健委員であって、俺は体育委員だ。
なのに担任の視線も、周りの視線も俺に据えられていた。
……ちなみに魔王の視線もその中に含まれている。
佐藤違いです、なんて言える雰囲気ではない。そもそも保健委員は佐藤さんの他にもいたはずだ。そいつはどうしたどこ行った。
「我は保健室などに行かぬぞ、アロイス」
「だからアロイスじゃねぇって…」
「まだ記憶が戻らぬのか」
「たぶん一生戻らないな」
アロイスの記憶なんか知らんっての。
俺は魔王の腕を掴み、強引に引っ張ってコートの外に連れ出した。
「おい! 離せ! 俺はやつめに一矢報いてやらねば気が済まぬ!」
「またやり返されるだけだって」
「なんだと…!?」
「こんな細腕であいつの球が受けられるわけないだろ。また吹っ飛ばされるのがオチだ」
「貴様アロイスの分際で、好き放題言いおって…!」
「だからアロイスじゃねぇって」
「主に逆らうか」
「主じゃないからね」
俺は抵抗する魔王を保健室に引きずっていった。
今の俺でもあっさり殺せそうなくらい魔王は非力だった。……こんなんでよく世界征服なんて言えるもんだと呆れる。どうやって征服する気だ魔王よ。
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