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四年になった。
クラス替えに期待したのに、またもや魔王と同じクラスだった。
……まぁなんとなくこの時点で嫌な予感はしていたのだ。
魔王は、俺とは会話をするけれど、他の人間は虫けらかなにかぐらいにしか思っていない態度を貫いている。
従って、遠足の班も、調理実習の班も、運動会の二人三脚も、社会科見学の班も、ありとあらゆる班分けで俺は魔王と一緒だった。
数々の学校の行事で、俺は魔王との親睦を半強制的にちゃくちゃくと深めていった。深めたくもないのに。
せめてプライベートは死守したい。……というのが最近切実になりつつある俺のもっぱらの願いだ。
その日は、図画工作の時間にカッターナイフを使ってペットボトルの車を制作していた。
授業の半ばにさしかかった頃、教室内の一角で騒ぎが起こった。他のクラスメイト同様、俺も注目をあびたそちらへ目をやる。
「うっわ、魔王が指切った!」
「おーい、魔王係りー!」
「佐藤、早くぅ~!」
騒ぎのもとは例によって例のごとく我らが魔王サマである。
教室中の視線がいっきにこちらに集まった。
……だから俺はそんな係りについた覚えはさらさらないんですけどね。
担任まで助けを求めるような目で見ないでほしい。
今こそ保健委員の出番だろうが。
いつ働くの? 今でしょ?
塾の偉い先生もそう言ってるじゃないか。
「佐藤、悪いが鈴木を保健室へ連れてってやってくれ」
俺が無視していると、担任が懇願してきた。
(……やれやれ)
仕方なくしぶしぶ席を立ち、魔王のもとへゆく。
座ったままの魔王を見下ろすと、人差し指がざっくりいっていた。思ったよりも深い。
傷口から赤い血がぽたぽたと落ち、机の上に赤い水たまりを作っている。
――なのに、いたって魔王は平気そうに滴り落ちる血を眺めていた。
そんな態度が無性にイラつく。
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