クラスメイトは魔王

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(俺たちは転生した)  俺はここで、この世界で、やり直したい。  今度こそ幸せになりたい。  ――おまえはそうじゃないのか? 魔王。 「痛い」 「…え、あっ、わりぃ」  ぼそりと言われ、俺は慌てて握っていた手を放した。  大仰に万歳して後ずさった俺を見て魔王がくくくと喉を鳴らして笑った。そんな風に笑うと奴はますます悪人度が増す。たとえるなら黒い薔薇のような妖艶さ。闇に咲く悪の華。 「そうか、おまえは我が痛いのは嫌か」 「い、や、それは…」  なぜか魔王の笑みにぞくりと背筋が震えた。 「愛(う)いやつじゃ」  俺はいっきに総毛だち、魔王を置いて一目散にその場から遁走した。  ――あれは突っ込んだらアカンやつや! と本能が訴えかけていた。  魔王が狙いを定めた捕食者の目で逃げ去る俺を見ていたことには気づかなかった。あとから思えば、俺はこの時点で奴から全力で逃げるべきだった。そうすればまたこの先の運命も違ったはずだったのに……。  逃げ損ねた俺に、平凡な未来が訪れることは――もはやない。
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