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五年になった。
またもや魔王とは同クラスだ。
もはや学校の陰謀としか思えない。
教育委員会に訴えてやる。
と、息まく俺を友達の内村ことウッチーがにやにや笑いでからかってくる。
「とかいってホントはどうなの。うれしいんじゃね?」
「はぁ? なんで俺がうれしがるんだよ?」
意味わからん。
今回はじめて同じクラスになったが、ウッチーとは保育園のときからの長い付き合いだ。
ちなみに同じコーポに住んでいたりする。
いわゆる幼馴染というやつだ。
お調子者で言いにくいことをズケズケ言う性格だが、裏はない。
俺にとっては付き合いやすいタイプの人間だった。腹黒い輩は前世で十分堪能した。身近な人間と繰り広げる腹の探り合いはもうノーサンキューだ。今世では単純明快な人間関係を求む。
「変人同士でいいコンビだと思うけどなぁ」
ウッチーは幼馴染なので、俺の過去の逸話をいろいろ知っている。
過去といってももちろん前世の話なんかじゃない。保育園に通っていた時代の話だ。前世のことは誰にも、母親にすら教えていないトップシークレットである。
小学校にあがってからは、周りに合わせることも覚えた俺だけど、保育園の頃は、……まぁそれなりにやらかしていた。
園の木のてっぺんに登ったり(園全体の構造を把握したかった)、園の畑でモグラを素手で捕まえたり(穴から顔を覗かせたので食料にしようとした)、ついうっかり前世の言葉で話したり(日本語ムズカシかったんだよ)、劇で魔王役の幼児を段ボールの剣でぶっ叩いて泣かせたり(条件反射で魔王に反応した)、……そういった色々だ。ウッチーは俺の園児時代の黒歴史を知っている数少ない存在だった。
「安心しろよ。俺はおまえがホモになっても友達だから」
からかい口調から、一転いい笑顔になって爆弾発言をしたウッチーの顔にむけて俺は危うく飲みかけた牛乳を吹き出しそうになった。狙いすましたタイミングだ。絶対にワザとだ。ウッチーめ、やってくれる。
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