クラスメイトは魔王

8/10

16843人が本棚に入れています
本棚に追加
/1282ページ
 野生児だった俺の保育園時代を知っているウッチーは、やや焦った様子で「俺じゃない」と弁明した。なにやら身の危険を感じたらしい。なかなか良い勘をしている。 「あたしも聞いたよその噂。ほんとなの?」  隣席の女子が目を輝かせて話に加わってきた。……聞き耳たててんなよ、まったくもう。 「事実無根だ。――なんで俺があいつとそんなウワサされなきゃならないんだよ…」 「え? だって、仲いいよね」 「よくねぇよ。どこ見て言ってんだ」 「どこって…」 「魔王係りだし」 「そんな係りは存在しねぇ」 「――いやいやカッキー、そこはもう認めようよ」 「魔王くん、きれいだし、いいじゃん」 「キレイって、男じゃねぇか」 「大丈夫。クラスの女子は味方だよ…!」 「そんなんいらねぇし…」 「わが校の生BLってちょっと有名だよ」 「そうそう、去年SNSで拡散されてたよね。ママがやたら興奮して魔王くんのこと聞いてくるんだもん」 「うちもうちも」  ママまでか。なんてこった。どいつもこいつも…… 「……腐ってやがる」 「そういうの、好きな女子多いから」  そういうキミも嬉しそうですな。まさか犯人はおまえか。 「なんでそんなデマが流れんだよ…」  頭を抱えたい気分で呻くと、すかさず同じ班の奴らに「だって魔王係りだから」と突っ込まれた。くそう、息あってんな、おまえら。むかつくぜ。  魔王が転校してきてから、俺の平凡な学校生活は日に日に魔王に侵食されてゆき、現在ではすっかり魔王の世話役的立場に据えられてしまっている。 「仕方ないじゃん。魔王がまともにコミュニケーションとるのおまえだけだし」 「授業をサボる魔王くんを見つけられるの、佐藤くんだけだし」 「先生たちの指示は無視しても、おまえの言うことは一応聞くし」
/1282ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16843人が本棚に入れています
本棚に追加