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野生児だった俺の保育園時代を知っているウッチーは、やや焦った様子で「俺じゃない」と弁明した。なにやら身の危険を感じたらしい。なかなか良い勘をしている。
「あたしも聞いたよその噂。ほんとなの?」
隣席の女子が目を輝かせて話に加わってきた。……聞き耳たててんなよ、まったくもう。
「事実無根だ。――なんで俺があいつとそんなウワサされなきゃならないんだよ…」
「え? だって、仲いいよね」
「よくねぇよ。どこ見て言ってんだ」
「どこって…」
「魔王係りだし」
「そんな係りは存在しねぇ」
「――いやいやカッキー、そこはもう認めようよ」
「魔王くん、きれいだし、いいじゃん」
「キレイって、男じゃねぇか」
「大丈夫。クラスの女子は味方だよ…!」
「そんなんいらねぇし…」
「わが校の生BLってちょっと有名だよ」
「そうそう、去年SNSで拡散されてたよね。ママがやたら興奮して魔王くんのこと聞いてくるんだもん」
「うちもうちも」
ママまでか。なんてこった。どいつもこいつも……
「……腐ってやがる」
「そういうの、好きな女子多いから」
そういうキミも嬉しそうですな。まさか犯人はおまえか。
「なんでそんなデマが流れんだよ…」
頭を抱えたい気分で呻くと、すかさず同じ班の奴らに「だって魔王係りだから」と突っ込まれた。くそう、息あってんな、おまえら。むかつくぜ。
魔王が転校してきてから、俺の平凡な学校生活は日に日に魔王に侵食されてゆき、現在ではすっかり魔王の世話役的立場に据えられてしまっている。
「仕方ないじゃん。魔王がまともにコミュニケーションとるのおまえだけだし」
「授業をサボる魔王くんを見つけられるの、佐藤くんだけだし」
「先生たちの指示は無視しても、おまえの言うことは一応聞くし」
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