クラスメイトは魔王

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 すっかり食欲の失せてしまった俺だったが、魔王みたいに給食を残したりはせずに無理やり口に掻き込むようにして食べきった。 (……にしたって、デキてるはねーだろ)  とんでもないでっち上げに心中溜息をつくと、食器を片付けがてらちらりと魔王に視線をやる。  しかし、奴はすでに席にはいなかった。  ほとんどが食べ残された食器が机の上にのっているのみだ。  ……いつしかそれを片付けるのも俺の仕事になってしまっていた。 『逃げちゃえばいいのに』  かつてそう言って笑った仲間はもういない。 『魔王を倒して凱旋だ』  そう励ましてくれた仲間も、 『一緒に戦います!』  力強く手を握ってついてきてくれた仲間も、 『死にそうになったら何度だって回復してさしあげます』  流暢な皮肉を操る仲間も、 『君は一人じゃない』  微笑んで肩を叩いてくれた仲間も、  もういない。 (あいつら全員、きっと笑うだろうなぁ)  転生して魔王の世話を焼いているなんて知ったら。  自分でも本当にどうかと思うけれど、……腹をたてながら嫌々ながらもつい手を出してしまう。 『本当に師匠は仕方のない性分ですね』  記憶の中だけで生きている弟子が、困ったように笑う姿が一瞬だけ浮かんで消えた。  彼らのことはなるべく思い出さないよう努めていたのに、その日は一日中、前世の思い出がふわりふわりと脳裏を過って俺の心を苛(さいな)み続けた。  ――魔王じゃなく、転生したのがあいつらなら、きっとこんなにも惑わなかった。  なぜ自分と魔王なのか。  なぜ転生した先で出会ってしまったのか。  益体もないことを考える自分にうんざりした。 『神のみぞ知る。考えるだけ無駄ですよ』  神に仕える神官の揶揄が聞こえた気がした。
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