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――……あー、こういう嗅覚の鋭いヤツって苦手。つか、ツラ関係なくね? 平凡が世間の片隅でひっそりと強くたくましく生きちゃダメなわけ?
「何モンって……水戸黄門」
「…………………ざけんな」
俺の渾身のボケは不発に終わった。ブンっと握り拳が俺の頭のあった空間に叩き込まれる。ツッコミにしては激しすぎるだろ、オイ。
「ッあっぶねーな!」
「だから避けんなっつーの」
「避けなきゃ顔面が陥没するわ!」
「そのツラじゃ大して変わんねぇよ」
「変わるわふざけんな!」
さりげに暴言多いな。平凡だって顔は大事なんだよ。
それに、無駄に殴られる趣味もない。
「つか、男(ヤロー)のツラなんざどーでもいー」
「どーでもいーならそこ通してくんねー?」
「てめえを一発殴ってからな」
「……なんでそーなんの」
まったくもって意味不明なんですけど。
もーさぁこの学園の奴ら意味不明なヤツ多すぎる。いい加減に温和な俺もキレますよ?
「笑える噂ふりまいてんじゃねーか。俺がその実力、見極めてやるよ」
「うわぁ、大迷惑」
「なぁに、殺しゃしねー。……せいぜい半殺し程度だ」
「うわぁ、超迷惑」
「――そーゆー反応がてめーは怪しすぎんだ、よッ」
最後の「よ」で今度は蹴りが横から飛んできた。……速い。
ほぼ反射で避けて床に転がる。
速いが、直線的な動きは軌道の予測がたて易い。
ただ、……並みの威力じゃない赤髪の打撃を生身で受けたら、たぶん一発でアウトだ。
部屋の中を逃げ回り、何度目かの攻撃を避けることに成功した俺に、赤髪が苛立たしげに舌打ちした。
「ちょこまか逃げてねーでやり返してこいよ」
「や、俺、平和主義なんで」
「はっ、ヒグマやサイを倒したヤツがよく言うぜ」
「また増えてるし!」
「まぁガセだろーけどな」
「わかってんなら攻撃してくんなよ!?」
「……ちょっと楽しくなってきた」
「こっちはちっとも楽しくねーよ」
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