前世は勇者

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「おまえ…!」 俺は本能的な危機感を察知し、顔ごと視線をそらした。 ……だが、完全にアウトだったらしい。 ぺたぺたとやけに間抜けに聞こえるスリッパの音が近づいてきて、乱暴に髪を引っ張られて顔を上げさせられた。 (バレたか?) 心臓の音がドコドコ鳴って煩い。なんで転生してまで魔王と出会わなくてはならないんだ。 俺は平凡なただの子供だ。 魔王なんて……どうすりゃいいんだ。 「おまえ! アロイスだな!」 至近距離に、記憶にあるよりもずっと幼い魔王の顔があった。――喜色満面で。 あんまり無邪気な笑顔なので、俺は不覚にも見惚れ、呆けてしまった。 「アロイス!」 いきなり抱き着いてきた魔王に、俺の頭は真っ白だ。 (…っていうか、アロイスって誰)
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