前世は勇者

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しばらく呆然と抱き着かれるがままになっていた俺だったが、教室中の視線を浴びていることに気づき、ぐっと魔王の身体を押し返す。 とんだ見世物に巻き込まれた。 「俺はアロイスじゃない」 魔王の笑顔が消え、そのかわりに戸惑いが浮かぶ。 「なんだと?」 「だから俺はアロイスなんかじゃないし、そんなやつ知らない」 「……そうか、記憶が戻ってないのだな。だが安心するがよい、我は貴様を見捨てはせぬ。ようやく出会えた同胞だ、記憶はなくとも我に仕えることを許そうぞ」 「いやいやいや、待て待て」 勝手に配下に加えるな。 仕える気ねぇし。 そもそも俺はおまえの家来じゃなくて、勇者だ。勇者を陣営に引き入れちゃダメだろ。 「本日よりそなたを我の第一側近にぐうす。励めよ」 ――だから俺、勇者だからね。
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