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不思議なことに、魔族が使う古語と神官が使う神聖言語は、とてもよく似ていた。
むかし、言語のルーツが一緒だと提唱した学者がいたそうだが、異端児扱いされ、神殿に拘束されたらしい。
(それにしても……)
魔族が学園広告のメッセージを見たところで果たしてそれに興味を抱くだろうかと俺はやや引っ掛かりを覚えた。
人間が提供する『力』に魅力を感じるとは思えなかったのだ。
「あとは、学園側が技能的に優れたものをスカウトする場合もある。姫君たちはそのパターンだね。彼らは剣の才を見出されて学園側が入学を勧めた口だよ」
「え、そうなのか?」
「小学生のときに、二人とも剣道の全国大会で優勝している。そこで彼らは出会ったらしい」
その出会いは運命的なようでいて、剣に生きたあの二人ならそれは必然とも言えた。
「あれ? でも、優勝って普通一人じゃないのか?」
「あの二人で、毎年優勝争いをしていたという話だよ。勝ったり負けたり、今でも互角にやりあっている。ときどき騎士団の修練所に見学に行くけれど、二人とも楽しそうだよ」
なるほど。
前世では、守護騎士の方が腕が立ったが、今世では互角なのか。――良かったな、姫。
ずっと姫は騎士に護られるだけは嫌だと足掻いていたから。
しかし、どんなに努力しても、鍛錬しても、女である身では体力も筋力も持久力も守護騎士には届かなかった。
魔法の力を加算して、ようやく五分で戦えた。
いや…、それでも騎士はさりげなく手加減をしていたから、力の差は歴然だっただろう。
それに、姫は剣の力だけで守護騎士を超えたいようだった。
俺にはどうしてそこまで姫がこだわるのかはわからなかったが…。
今世でその夢がかなったのなら良かったと単純に思った。
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