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「件(くだん)の根津がどういう経緯でこの学園に入学することになったのかは知らないけれど、成績が飛びぬけて良いらしいからスカウトされた口かもしれないね」
そこで俺はふと疑問に思った事を口にした。
「そういえば…あんたはどうだったんだ?」
俺は兄がどうして学園への入学を決めたのか知らなかった。
両親が再婚したとき、すでに兄は皇洞学園への受験を決めており、うまくいけば兄との共同生活も半年後には解消されると聞きおよび、胸を撫で下ろしたものである。
しかし、詳しい志望動機などを聞いたことはない。
薄情かもしれないが、同居直後は兄と同じ空間にいることがとにかく気詰まりで仕方なかったのだ。
……兄は兄でよくわからない絡み方をしてくるし、両親の手前もあるから遠慮していたら……次第に兄の行動がエスカレートしていって今に至る、といった感じだ。
兄いわく、仲良しアピールをして親を安心させたいということだったらしいが、いまいち疑わしい。
前世の恨みや鬱憤をこの機会に晴らそうという魂胆のように思えてならなかった。つまりとても胡散臭かったのだ。
思えば、兄の「ブラコンのふり」は元はそこから始まっている気がする。
「僕は……」
自称ブラコンな兄はわずかに言いよどむと、
「――学園島の『力』に呼ばれたから…かな」
「ちから…?」
「この島が内包する『力』だよ。学園島は巨大な力場になっている。パワースポットと呼ばれる場所は世界各地に存在するけれど、この地のそれは桁違いだ。……たぶん、僕以外にもその『力』に引かれ、『力』を求めて来る者もこの学園には居ると思うよ。わかる者にはわかるからね。パンフレットの文言通りに、『力』に導かれ、集う」
――力に導かれ……。
それを聞いて脳裏に浮かんだのは、やはり魔王の姿だった。
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