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「あぁ! てめえっ!」
窓枠に足をかけ、乗り上げる。
山側といえどもすぐ近くに飛び移れそうな木の枝があるわけじゃない。窓から見下ろす地面は、昔住んでいたコーポの二階よりもずいぶん遠くに感じた。
「おい飛び降りる気か!? さすがにヤバいだろーが!」
ふっと自然な笑みが浮かんだ。こいつ、案外、悪いヤツじゃねーかもな。
俺が窓から飛び降りるのを防ごうと駆け寄ってくる赤髪を、ぎりぎりまで引き付ける。
そして、俺はその手が届く直前に、跳んだ。
――後ろへ。
天井すれすれまでジャンプした俺は、落下途中でくるりと宙返りし、赤髪が先ほどまで陣取っていた位置付近に着地する。
……久しぶりにやったけど上手くいってよかった。
こちらを振り返り唖然としている赤髪の顔が愉快で、俺は軽く笑った。
「じゃーな。あんまタバコ吸いすぎんなよ。肺がんになるぞ」
そしていらん一言を残して、――210号室のドアにダッシュした。
「なっ…なんで…! なんでそれ知って…!? おい! てめーーーー!! 待ちやがれ!!」
待てと言われて待つバカはいない。
当然、俺はさっさと逃げ出した。
もちろん逃走ルートは入寮初日に確保済み。
赤髪はすぐに追いかけてきたようだが、俺は奴に捕まることなく自室までまんまと逃げおおせたのだった。
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