夢から覚めて

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夢から覚めて

 俺は完全に記憶が戻った。  栃木県にある男体山で白骨死体が見つかった。 身元は神澤成一と判明した。    目の前の豚、向井志穂は投資詐欺グループの黒幕だった。  薊会に飼われている老人や社員たちを次々に罠に嵌めていった。  梨田が群馬県渋川市で毒殺されて以来、神澤は向井に楯突くようになった。 『何の罪もない人たちを、これ以上不幸にするのはやめにしませんか?』  藤原に協力してもらい、神澤に睡眠導入剤を投与し殺害し遺棄した。   龍門刑事は薊会の会員だった。  息子がダウン症で、『画期的な治療』を餌に内部情報をリークさせた。   親父がパーキンソン病で倒れる前に聞いた、推理だ。親父は上からの重圧と、犯人の影に怯え不眠症になった。   龍門の紹介で朝霧病院を受診、精神安定剤の副作用により介護を余儀なくされた。   衰えゆく己の姿に不安を感じ、自らを銃で葬り去った。 「薊会の毒牙にまんまとかかったってわけだ」  「気づくの遅すぎ」   向井のスマホが鳴った。舌打ちをして、耳に当てる。「山ちゃんどうした?あぁ、毛塚殺したの?ハハハハ毛繕い」    山崎と向井は恋人関係にある。山崎は鈍感で、向井の真の姿を知らない。  スマホを切り、スイッチを押し向井は外に出た。ガスが充満する。  菜の花の咲く小川の畔で麗子が手を降っている。      2019年   ガキの声がうるさい。俺は病院帰り、彼女とレストランに出掛けた。彼女は、「可愛い」と言っているが、ウゼーだけだ。  彼女は俺を、カツレツと呼ぶが意味が分からない。俺の名前は金田一だ。 「子供は泣くのが仕事よ」と、彼女が言った。   1カ月前まで介護の仕事をしていたが、ヘルニアになり、仕事を切られ、鬱病になった。  お揃いで目玉焼きカレーを頼んだ。新聞を読んだ。朝霧病院のナースが、入院患者からの預り金を私的流用していたそうだ。 「何が白衣の天使だ、どす黒い天使だな」 「違うわよ、金よ。全てこの世は金よ」 「GoldenNurse」 値段の割にはマズイカレーだった。  俺はウエイトレスを射殺した。 「不味いんだよ、馬鹿野郎!」
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