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コルサコフ症候群
パトカーのサイレンが聞こえ、俺は列車に飛び乗った。何にも恐くない。きっと、銃で撃たれても痛くない。フハハハハハハハ!
「あっれぇ~?葛城くん?」
懐かしい声がした。列車が蛇のようにグネグネ曲がる。俺は、いつのまにか東京モノレールに乗っていた。
「麗子?」
「違うよぉ、奈緒だよ」
「あっ、あぁ、奈緒かぁ」
奈緒は、俺が○○に勤めていたときに知り合った人だ。
奈緒は茶色の髪を○○で止めていた。
「ヴッ、ぐ・ざ・い」
奈緒が鼻を摘まむ。
「そんなに臭い?」
そこで記憶が戻る。フハハハハハハハ、堀田なんて殺してねぇよ。あれは、俺の妄想だ。
「うんっ、酒なんて私も飲むし…ゲホッ」せきこみ「あのときはゴメンね?」
「あぁ、人間なら誰でもあるよ。そういや、あのときは尾崎豊のCDありがとう。あぁ、ヘアピンかぁ!やっと思い出した」
○○なんて惚けたが、俺は20代のはじめ鬱病で閉鎖病棟に入院したことがある。
そのときに安定剤と尾崎豊の世界にトリップした。特に、《愛の消えた街さ 昔から そうなのだろうか?》って曲が好きだ。
「尾崎のCDなんて貸してないけど」
「おいおい、冗談はやめてくれよ?麗子」
バシン!平手が飛んできた!
「麗子って誰よ!?」
ヤバッ(;゜0゜)やっちまった!CD貸してくれたのは麗子だった。
羽田から海外へ逃亡しよう。そして、悠々自適に暮らすんだ。サファイアブルーの空に、ジェット機が足跡を描く。
そこで夢から覚めた。冥王塾に電話をしたら、《はい、冥王塾です》と、堀田が出た。
「すみません、風邪引いたみたいなんです、す、す…」
《休むのは自由だけど、分かっているよね?》
この野郎!メガネ、カチわるぞ!
自分を福山雅治と思い込んでいるナルシストだ。死ねよ!どうせ、クビだし…。
「明日からがんばりま~っす」
ミニストップのイートインコーナーでサンドイッチを食べて朝霧病院に向かった。
心療内科に久々にかかった。癖毛の○○って奴が新しい先生だ。
一部始終を話した。
「なるほど、過去の記憶と妄想の区別がつかないのですね?あなたはコルサコフ症候群です」
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