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再会
日付の感覚がない。冬なのは確かだ。多分、2月だ。だけど、桜が咲いているしな。
しかし、さっきの先生、堀田に似ていたな。
『コルサコフ症候群は、アルコールを良く飲む人がなる病気です』
嘘だ~、1日にビール1缶ぐらいしか飲まないけど。まぁ、肝臓悪くなる前にデパスを飲んでもいいかもな。デパスは精神安定剤のひとつだ。
あの医者、堀田の兄弟かな?
堀田は、朝霧病院のスパイなんだ!
きっと、吉田松陰にでもなるつもりだ。生徒たちを洗脳させ、テロを起こすつもりだ。
病院の中庭、マルボロメンソールをくわえる。ジッポーで火を点けた。
スマホの電話帳の【ら】を引き出し、【龍門】をプッシュした。高校時代の友人で、東武警察署の課長をしている。
《自分は東武署の龍門だ》
馴染みのダミ声に噴き出しそうになる。
「知ってるわい」
《レツ、何かあったのか?》
「堀田に殺される。あいつは朝霧のスパイだ」
《よし!援軍を送る》
東武警察署は宇都宮にある。
「あ…あのぅ、ペースメーカーしてるので電話やめて」
老婆の声が聞こえた。思わず舌打ちをした。
「心臓悪いんなら外に出るな!」
振り返り驚愕した。そこに立っていたのは白髪頭の奈緒だったのだ。
「あれ、カツレツじゃない?ゲホッゲホッ」
葛城烈、略してカツレツ。青春の短いページを共に過ごした彼女からは、死の薫りがした。
「奈緒!ど、どうして…?」
「89にもなればアチコチゆーことキカナクなるのも、無理ないよねぇ」
89!?
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