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看護師の仕事は給与が高いが、夜勤や残業も多く忙しい。
特に、莉音は新人のため送別会や飲み会の幹事など業務外の仕事をしなければいけないことも多く、雑務にも忙殺されていた。
しかし莉音はそれらをこなしながら、何とか道春の会話の時間を作っていた。
道春が自分との会話を楽しみにしていることと、ときおり道春が見せる“死”への願望が放っておけなかったからというのが、きっかけだった。
記憶を失って以来、道春にとって莉音と接することが、将来の不安を鎮める唯一の方法だ。
莉音も自身の外見が悪いと思っており、男性が自分を求めてくれた経験もなかったので、
外見が爽やかな道春が、自身を求めていることに悪い気がしなかったのである。
また、莉音は道春が自分に向ける優しい目が気に入っていた。
それは男性が芯から惚れた女性にする目だったからだ。
「莉音さん。僕、もうすぐ退院なんだろ?僕、やだよ・・・
父さんも母さんも一緒にいると頭が痛くなるんだ。
莉音さんといる時だけが唯一安らげるんだよ。
退院してもまた、会ってくれるかな?」
外傷が回復しつつあり、退院が真近に迫った道春は、莉音の手を握りながら言った。
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