記憶喪失が始まってから

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ある日の昼ごろ。 道春(みちはる)は日光を直接見たかのような眩しさを感じて、目を開ける。 すると、知らない顔の双眸と目が合った。 どうやら医師が目にペンライトを当てていたらしい。 ここは病院なのだろうと理解するのが遅れ、 道春がビクッと体を反応させて後ずさると、 身体中に激痛が走った。 道春が目を覚まし顔を歪める姿を見た医者は、驚いたような反応を見せ、 静かな部屋の中を大きな足音を立てて動く。 「息子さんがようやく起きられましたよー良かったですねぇ」 病室の外に出たはずの医師の声が、道春の耳にも聞こえた。どうやら元気な医師のようだ。 「ようやく目が覚めた!!心配したわよ」 初老の男女二人が道春の元へと駆けつける。 だが、心配そうに涙を浮かべながら詰めよる二つの顔が、 誰のものか道春にはわからなかった。
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