Scene1 銃弾《ブレット》なんてさようなら

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   ようやく路地の出口が見えてきた。  表通りは日当たりも良いようで、ここからは輝いて見える。 「あと少し!」  出口付近はゴミも少なく、思い切りアクセルを踏めそうだ。  ノエルがそう思ったとき、4階の窓から何かが飛び出した。  逆光でシルエットしかわからないが、人影のようにも見える。  その影は――ノエルに向けて発砲してきた。  パスンっ!  軽い銃声に、ノエルは思わずブレーキを踏んだ。  金切り声を上げて急停車する赤い車。 「っ……!」  弾は当たっていない。だが――  ノエルはハッとして空を見上げた。  ビルに挟まれた細長い空は、青々としている。  その中を、洗濯ひもがぶらぶらと揺らめいていた。    どうん!  騒音とともに車が激しく揺れる。 「ひゃっ――ああっ!」  女の声がして、またも車が揺れた。  ノエルが振り返ると、後部座席は大量の洗濯物に埋め尽くされていた。  その洗濯物の中から、2本の足が生えている。  突き出たそのあでやかな足は、やはり女のようである。 「だ、大丈夫か?」  呆気に取られながらも、ノエルが声をかける。  しかしそんなノエルの鼻先に、洗濯物から生えてきた拳銃(ハンドガン)が突きつけられた。 「助けてくれる?」  顔は埋もれているが、その眼光はまるで闇夜の猫のように、洗濯物の奥からこちらを見据えているのがわかった。 「それはお前の願いか?」  ノエルは、何か場違いにも思える言葉を返していた。  しかし女のほうも平然と、 「そうね、わたしの心からのお願い、かな。」  と返した。  女がそう言うと――銃弾がボンネットに穴を開けた。  ビルから頭を出した男たちが、短機関銃を手に銃弾の雨を降らせている。  女は埋もれていたもう一方(・・・・)の拳銃を、男たちへ向けて撃つ。  ノエルはアクセルを踏み込んで、まぶしい表通りへと飛び出していった。
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