Scene2 酒場《バッコス》なんてさようなら

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             ***  日の暮れかかるころ、ポークルムという小さな宿場町にたどり着いた。  ここなら宿には困るまいと思っていたノエルだったが、アンナに先導されたのは、『パッション』という酒場であった。 「ノエル、お金持ってる?」 「はあ?」  後部座席のヘッドレストに、女帝よろしく腰かけたアンナが訊いた。  銃口はいまだにノエルを捉えている。 「なんだ、カツアゲか。」  さすがにそろそろ苛立ってきたノエルが口を尖らせた。 「違うわ。貸してって言ってるの。」 「カツアゲはみんなそう言うんだ。」 「わたしはお願いしてるのよ。」 「また『願い』か……」 「食べなきゃ人は生きていけないのよね。哀しいけど。」 「全然、哀しそうにみえねえな――OK、わかったよ。」 「ありがとっ。」  ノエルが渋々了承したのをみて、嬉しそうに車から飛び降りるアンナ。  足取りは軽く、ノエルに銃口を向けながらも先に歩いていく。  ノエルも仕方なく、アンナに続いて車を降りた。  ログハウス風の酒場はまだ新築らしく、木の香りを漂わせている。  店長の趣味なのだろうか、太い木が組まれた頑丈そうな店である。  さらに入口には、やたら大きな立看板があった。
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