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「おいアンナっ!」
ノエルの声に、酒場のドアに手をかけていたアンナが振り返った。
「なぁに?」
「おまえ、何やらかしたんだ?」
「いちいち大げさなのよねー、ここの店長。」
「…………」
なにか不穏なものを感じたノエルは、黙ってしまった。
そしてそれは正しかったと、すぐにわかることとなる。
パスン。
入店早々、アンナは店長の耳たぶを撃ち抜いていた。
「ひぎゃっ!? あっ、アンナさん!?」
驚愕する店長に、アンナは微笑みをもってこたえた。
「久しぶりぃ、バックス。元気にしてたぁ?」
バックスと呼ばれた大男は、みるみる青ざめていった。
「お店もきれいになったのね。建て替えてからどれくらい経つの?」
「いえ……まあ……」
耳を押さえながらおびえる店長。タンクトップからあふれるご自慢の筋肉が、見事にあわ立っている。
(見ろ、アンナだ!)
(あの土竜殺し《ワームキラー》?)
(実在したのか? 都市伝説だと思ってたぞ。)
などと客が口々に囁きはじめる。
「ところでさあ、入口に目障りなものがあったんだけど――あれ何?」
「うっ……」
窮した店長は、さらに顔をひきつらせた。
「困ってることがあるんだったら相談してよぉ。わたしとあなたの仲でしょう?」
「う……うぅ……」
「あ、わかった! 勘定が溜まってるのね。でも大丈夫。」
そういってアンナは、入口に立ち尽くしていたノエルを指した。
「今日は彼が払ってくれるの。」
「恐喝されてるんだ。」
「余計なことは言わなくていいのよ、ノエル。」
アンナが銃口でカウンターを指定するので、ノエルは仕方なく席に着いた。
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