Scene2 酒場《バッコス》なんてさようなら

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 店長はポケットからリモコンを取り出して、ボタンを押す。  すると壁掛けの大きな一枚絵が落ちて、扉があらわれた。  扉を開けると、中には酒樽が積まれていた。 「残念でした、アンナさん。今日は商工会の打ち上げをやっていたのです!」  店長がそう叫ぶと、居合わせた客が一斉に立ち上がり、揃いの法被を羽織った。 「いきますよ!商工会青年部のみなさん!」 『おぉー!』  掛け声とともに青年部会員たちは樽を取り出して、天蓋をハンマーで叩き割る。  強烈なにおいが漂う酒を、手際よく柄杓で注ぎ分けていった。 『乾杯ー!』  活気あふれる青年部会員たちは、一気にバグ酒をあおる――  かくして、アンナはむくつけき大男たちに取り囲まれてしまった。 「そんなもの飲んで、将来ハゲても知らないからね。」  アンナは腰のホルスターに拳銃をしまうと、指の関節をボキボキ鳴らす。  ようやく銃口から逃れたノエルだったが、そんなノエルに、 「逃げたら撃つねっ。」  とアンナは冷ややかに言い放った。  青年部会員の肥大した手が伸びてくる。  アンナはその手を握り返した。  互いに手と手を取り合う、力比べの形となる。 「握り潰してやらァァァ!」  大男に押されてズンと沈み込んだアンナだったが――  アンナは涼しい顔をしていた。 「じゃあ次はわたし。」  アンナは大男の両腕つかんだまま、ひねり上げる。 「にぃぃぃ!?」  大男が悲鳴を上げたがもう遅い。  アンナは大男をぶん投げた。  地面に打ちつけられた大男はあっさり失神してしまう。 「力比べだったら、わたし負けたことないの。」 「ふぬぉぉぉ!!」  雄叫びとともに、青年部会員は次々とアンナに飛びかかる。  しかしアンナはそんな男たちを、ちぎっては投げ、事もなく蹂躙していく。  投げられ、極められ、折られた青年部会員は、あえなく消沈となった。
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