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「あら、もう終わり?」
アンナがふうと一息つくと――どこからか声が響いた。
『ふっふっふっふ……』
含みを持ったいやらしい声は、店内のスピーカーから流れているようであった。
そういえば、店長の姿がない。
青年部会員とやり合っているうちに、姿をくらましたようである。
『アンナ! いや、アンナさん……』
染みついた恐怖は拭えないのか、マイク越しでも呼び捨てにできない店長の声。
『今日という今日は、一滴も飲まずに帰っていただきます。』
ファンファーレが鳴り響いた。
壁がせり出てきて、隠し部屋が開かれる。
おそらくこの店は、店長が対アンナ用に改築しまくったのだろう。
壁の中からあらわれた店長は、妙な機械を身にまとっていた。
それは強化外骨格の一種で、より攻撃に特化した武装外骨格と呼ばれるものである。
「それ、軍事品? よく手に入れたね。」
『あなたに勝つためなら、ローン地獄も怖くない!』
武装外骨格。それは『神の遺物』という希少なオーバーテクノロジーを利用した兵器である。
市場に出回らない逸品を、関係者に横流しでもしてもらったのだろう。
店長が脚部のリニアキャタピラーを空転させると、キュインキュインと轟音が上がった。
『鍛え上げられたわたしの肉体を、肉の弾丸として射出する!』
「えっと……つまり『突進』ってこと?」
『わたしの思いを届けるには、これしかないっ!』
店長はすでに泡を吹き、目を血走らせていた。
バグ酒の影響だろうが、これでは狂人、いや狂犬、いや狂猪である。
『わたしがこうなったのもォッ、あなたのせいだぁァッ!』
キャタピラーが地面に触れると同時に、高速射出される店長。
アンナがひらりとかわすと、直線上に倒れていた青年部会員たちが吹き飛んだ。
さらにその激突は、もはや爆撃のように分厚い壁をえぐる。
しかし店長は、その強靭な肉体に護られて無事であった。
「あーあ、またお店が無茶苦茶ね。」
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