Scene3 予言者《ナービー》なんてさようなら

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             ***  深夜。  ようやくたどり着いた宿屋で、アンナは臆面もなく言った。 「ツインで。」 「ほほう、こんなべっぴんさんとご旅行なんて、妬けますなダンナ。」  台帳係が軽口を叩く。 「新婚旅行(ハネムーン)なのっ。」  酒に酔って上機嫌なアンナは悪乗りをはじめている。  カウンターの下で銃口を突きつけられているノエルは、黙るしかない。 「お熱いですな。ダブルも空いてございますよ。」 「それも良いわね? ノエルはどっちがいい?」 「おれはシングルがいい。」  精一杯の悪態をつくノエル。 「小さなベッドで抱き合うのもいいわね。」 「そうゆう意味じゃねえ! 2部屋だ!」 「ほほほ、仲がよろしいですな。でしたらツインにしておきましょう。」  なにかを誤解した台帳係は、にやにやと筆を進めていく。 「それからオジサン、もうひとつお願いがあるの。わたしたち『泊まってない《ノー・ステイ》』ってことにしてくれない?」 「おや、いわくつき《・・・・・》ですかい?」 「駆落婚(ランナウェイマリッジ)よ。応援してねっ!」 「これはまたお熱い! ええ、ええ、応援いたしますとも!」  気の回る台帳係は、明らかに偽名が書かれた宿帳にも、なにも言わなかった。  
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