Scene3 予言者《ナービー》なんてさようなら

3/18
前へ
/170ページ
次へ
 部屋まで通されると、アンナは真白なシーツがピンと張られたベッドに身をあずけた。 「ふぃ~。」  力を抜いて、ベッドへ沈んでいくアンナ。  しかしその手にはまだ、拳銃(ハンドガン)が握られている。  ノエルも自分のベッドに腰を下ろしてから、こう切り出した。 「それで――これからどうする気だ?」 「そうねえ、先にシャワー浴びていいよ。」 「シャワーのことじゃねえ!」 「ノエルひどい髪だよ? 絶対先に入ったほうがいいと思う。じゃないとわたし……笑っちゃう! っぷはははははっ! きゃはははっ!」  爆笑をはじめたアンナに、ノエルは眉間にしわを寄せると、黙ってシャワールームへ入っていった。  するとアンナも、そっとシャワールームへ近寄っていく。  だがふたたび顔を出したノエルと目がかち合ってしまい、ハッとたじろぐアンナ。 「……おい。」 「な、なに?」 「まさかとは思うが……覗くなよ?」 「普通逆でしょ? それを言うの。」 「おまえならやりかねんと思って。」 「う……」  目を泳がせるアンナ。  ノエルは、視線を落としてアンナの拳銃に目をやった。 「そろそろ銃を下してくれないか? おちおち風呂にも入れねえ。」 「ん~……いまいち信用できないんだよね、ノエルのこと。」 「人の風呂を覗こうとしてたやつの言うことか。」 「だからそれは……その……」  とやや口籠ってから、アンナはこう続けた。 「ノエルの正体を見てやろうと思ったの!」 「あ?」 「だってノエル、いまいち『人』って感じがしないのよ。」 「…………」  これには、ノエルも窮してしまった。 「でも――こんなに巻き込んでおいて、さすがに(これ)はもういいかな。」  アンナは拳銃(ハンドガン)をゆっくりホルスターへしまった。  信用とまではいかなくとも、人並みに感謝はしているようである。 「ふう。」  緊張から解放されて、ノエルがひと息ついた。 「ほんと、ノエルって変人よね。わたしのお願いを聞いてくれるなんて、もう天使くらいしかいないと思ってたのに。」 ――ゲホッ、ゴホッ、ゲホッ!!    思わず咳込んでしまったノエル。  アンナは、ふふふっと破顔すると、ベッドに戻った。  ノエルは気まずくなって、そそくさとシャワー室へ逃げ込んだ。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加