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部屋まで通されると、アンナは真白なシーツがピンと張られたベッドに身をあずけた。
「ふぃ~。」
力を抜いて、ベッドへ沈んでいくアンナ。
しかしその手にはまだ、拳銃が握られている。
ノエルも自分のベッドに腰を下ろしてから、こう切り出した。
「それで――これからどうする気だ?」
「そうねえ、先にシャワー浴びていいよ。」
「シャワーのことじゃねえ!」
「ノエルひどい髪だよ? 絶対先に入ったほうがいいと思う。じゃないとわたし……笑っちゃう! っぷはははははっ! きゃはははっ!」
爆笑をはじめたアンナに、ノエルは眉間にしわを寄せると、黙ってシャワールームへ入っていった。
するとアンナも、そっとシャワールームへ近寄っていく。
だがふたたび顔を出したノエルと目がかち合ってしまい、ハッとたじろぐアンナ。
「……おい。」
「な、なに?」
「まさかとは思うが……覗くなよ?」
「普通逆でしょ? それを言うの。」
「おまえならやりかねんと思って。」
「う……」
目を泳がせるアンナ。
ノエルは、視線を落としてアンナの拳銃に目をやった。
「そろそろ銃を下してくれないか? おちおち風呂にも入れねえ。」
「ん~……いまいち信用できないんだよね、ノエルのこと。」
「人の風呂を覗こうとしてたやつの言うことか。」
「だからそれは……その……」
とやや口籠ってから、アンナはこう続けた。
「ノエルの正体を見てやろうと思ったの!」
「あ?」
「だってノエル、いまいち『人』って感じがしないのよ。」
「…………」
これには、ノエルも窮してしまった。
「でも――こんなに巻き込んでおいて、さすがに銃はもういいかな。」
アンナは拳銃をゆっくりホルスターへしまった。
信用とまではいかなくとも、人並みに感謝はしているようである。
「ふう。」
緊張から解放されて、ノエルがひと息ついた。
「ほんと、ノエルって変人よね。わたしのお願いを聞いてくれるなんて、もう天使くらいしかいないと思ってたのに。」
――ゲホッ、ゴホッ、ゲホッ!!
思わず咳込んでしまったノエル。
アンナは、ふふふっと破顔すると、ベッドに戻った。
ノエルは気まずくなって、そそくさとシャワー室へ逃げ込んだ。
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