Scene3 予言者《ナービー》なんてさようなら

4/18
前へ
/170ページ
次へ
   ノエルがシャワーから上がると、アンナは寝息を立てていた。  酒場で大立ち回りを演じていたのと同じ人物とは思えないほど、あどけない顔で眠っている。起きているときは大人びてみえたが、こうしていると10代後半、20代になりたてといったところかもしれない。 「天使みたい……か。」  アンナの直感はあなどれないな、とノエルは思った。  ノエルは自分の愛銃を取り出して、ぼんやり眺める。  ランプ灯がゆらゆら照らす銃身には、山羊のほかにも、〈H&G〉という文字が彫り込まれている。  それは〈聖なる山羊(ゴート・ホーリー)〉の頭文字を取ったもので、田舎町のとある名工によって作られたものであった。  そしてその名工も、かつてノエルに同じことを言ったのだった。 『ノエルって、天使みたいだね。』  そういってはにかんだ彼女の顔は、いまでもノエルの目に焼きついている。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加