Scene1 銃弾《ブレット》なんてさようなら

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「ところで旦那。厚かましいついでに、もうひとつお願いがあるんですケェ。」  行商がやや馴れ馴れしく話しかけてきた。 「お願い……」  ノエルは顔をひきつらせる。 「へえ。あれですケェ。」  行商は東の空を指した。  遠くに小さく、飛行船が浮かんでいるのが見える。  飛行船は底部からチカチカと、規則的な光を放っていた。 「EMラジオですケェ。聞かせてもらえねえですケェロケロ?」 「なんだ、そんなことか。」  ノエルはほっと胸を撫で下ろすと、コントロールパネルの『EM』ボタンを押した。  ダッシュボードに設置されている、卵型の金属球が点滅をはじめる。  飛行船から発信される電波を、この端末が受信しているのであった。端末の形から、(embryo)の頭文字を取って『EMラジオ』と言われている。 「ミカたんのファンなんですケェ。あの声を聴かねえと、一日やる気が出ねえんですケェ。」  光がおさまると、車載スピーカーから陽気な音楽があふれ出した。  行商は、すぴすぴすぴぴぴぴ、と鼻息を荒くしている。  音楽に続いて、今度は景気のいい女声が聞こえてきた。
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