天職ですな?

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何とも微妙ではあるが、ここに来て初めて抜刀した相手が…この微妙な浪士とは 腕力だけで男を押しやり、後ろでへたり込む喜一に目を向けます 喜「…あ、おい……ありが」 パンッ…! ほっとした、安心したような顔で私を見つめる喜一の頬を、少しだけ力を込めて引っ叩く 喜一は一瞬だけ動きを止め、叩いた頬を押さえながら目を向けてきた 葵「身の程を弁えなさい。君一人で勝てるわけがない相手に、木刀一つで立ち向かうのは浅はかにも程がある」 喜「っ…でも!」 葵「後ろの二人を連れて、隠れていなさい。私がどうにかします」 喜「………はい」 私の言いつけを守るべく、素早く人混みへと紛れ込んだ喜一を確認し、私は浪士達へと目を向けるのだ お利口さん達は、小さな殺気一つでジッと固まってくれています 葵「先ほどは失礼…あの子供には良く言い聞かせますので、この場はどうか抑えて頂けませんか?」 「っ…いきなり出てきて、何勝手なこと言ってやがる!!」 「首突っ込んだ落とし前つけやがれ!!!」 ああ、話し合いが通じないようだ 折角話せる口があるのに、こうも理解し合えないのは悲しいことだと思います 目標が私へと切り替わった浪士達は、私に向かって刀を振るうが… 葵「遅い」 「っグァ!?」 「がはっ…!!」 手に持つ刀を逆さに向け、腹や首に強く叩きつけていく この刀でなければ、きっと迷うことなくこの一帯を赤で染められたかもしれませんが… これで斬るには、勿体無い人間だと判断したんだ 「て、めぇ…!!殺す気もねぇ奴が、刀なんざ握ってんじゃねぇぞ!!!!!!」 葵「…おや、案外素敵なことを言う方なのですね」 殺す気もない奴が、ね その言葉に対し、小さく笑う私を見た男は馬鹿にされたと思ったのか…半ば発狂しながら、私に刀を振り下ろす 殺す気は、確かにない だが、覚悟ならある 私は刃を自分に向けたまま…男の後ろに回り込んだ 「なっ……!?」 葵「殺す気はありませんが、私はこれを握り続けます……強いて言うなれば」 強く、男の首にそれを打ち込み…倒れこんだソレを見下ろしながら、私は小さく呟いた 葵「殺す価値もない相手だからと、言いましょうか?」 これで殺す価値のない貴方には、逆さ刃で充分だ お判り頂けませんかね
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