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倒れた浪士達を横目に刀を仕舞えば、周りの野次馬も徐々にばらけていく。
私は捌けていく人々の中から喜一らしき影を見つけ、早足でそちらへ向かおうとします…が
ガシリッ
「ちょいと待ってやぁ、お兄さん」
葵「…まだいらっしゃったんですか?」
一歩進めたと同時に腕を掴まれ、何度か聞いた声に目を向ければ…やはり先ほどの女性がいてだな。
さっきとは打って変わり、腕力が凄まじいほどに跳ね上がっちゃいないかい?
なんて話は置いておけ、とりあえず私は喜一の元へ行きたいんですよ
葵「何か御用があるようならば、後程お伺いします。今は知人の元へ行かねばいけませんので…」
「なに言ってるん?元々用があったんはあんたの方やろ?」
葵「……はて」
なんのことやら
なんて馬鹿みたいなことは言いません。
多分、私が受けようとしていた仕事の仲間か何かだろう。それくらいの予想はできます。
女子がいるとは伺っていませんが、この方の言い分は間違っていません。だがしかし、今はそれどころじゃねーんですわ
私はゆるりと彼女の手を剥がし、笑顔でその手を胸元は押し返した
葵「確かに用があったのはこちらですが、確か強制ではなかったでしょう?ならば、私がこの場で受けないと選択をすれば…貴女の手をすり抜ける事も可能かと」
「なんや、あの子供がそんなに大事なんか?折角いい腕持ってはるのに、枷があったら台無しやんなぁ」
葵「はは、如何でしょう。少なからず私にとって……彼は枷ではありませんので」
ニッコニッコと笑いあっていた私達は、最後にその笑みを消し…何事もなかったかのように背を向けた
最初に会った時とは、全く違う空気を纏っていましたし…彼女もなかなかに腕が立つのだろうと察します
だが、知人…基家族のような存在を枷扱いされたのであれば、口も聞きたくないと思ってしまう
私も案外、丸くなったもんです
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