天職ですな?

5/26
666人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
倒れた浪士達を横目に刀を仕舞えば、周りの野次馬も徐々にばらけていく。 私は捌けていく人々の中から喜一らしき影を見つけ、早足でそちらへ向かおうとします…が ガシリッ 「ちょいと待ってやぁ、お兄さん」 葵「…まだいらっしゃったんですか?」 一歩進めたと同時に腕を掴まれ、何度か聞いた声に目を向ければ…やはり先ほどの女性がいてだな。 さっきとは打って変わり、腕力が凄まじいほどに跳ね上がっちゃいないかい? なんて話は置いておけ、とりあえず私は喜一の元へ行きたいんですよ 葵「何か御用があるようならば、後程お伺いします。今は知人の元へ行かねばいけませんので…」 「なに言ってるん?元々用があったんはあんたの方やろ?」 葵「……はて」 なんのことやら なんて馬鹿みたいなことは言いません。 多分、私が受けようとしていた仕事の仲間か何かだろう。それくらいの予想はできます。 女子がいるとは伺っていませんが、この方の言い分は間違っていません。だがしかし、今はそれどころじゃねーんですわ 私はゆるりと彼女の手を剥がし、笑顔でその手を胸元は押し返した 葵「確かに用があったのはこちらですが、確か強制ではなかったでしょう?ならば、私がこの場で受けないと選択をすれば…貴女の手をすり抜ける事も可能かと」 「なんや、あの子供がそんなに大事なんか?折角いい腕持ってはるのに、枷があったら台無しやんなぁ」 葵「はは、如何でしょう。少なからず私にとって……彼は枷ではありませんので」 ニッコニッコと笑いあっていた私達は、最後にその笑みを消し…何事もなかったかのように背を向けた 最初に会った時とは、全く違う空気を纏っていましたし…彼女もなかなかに腕が立つのだろうと察します だが、知人…基家族のような存在を枷扱いされたのであれば、口も聞きたくないと思ってしまう 私も案外、丸くなったもんです
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!