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文字通りコテンパンに叩きのめした喜一は傷だらけですが、とりあえずは縁側でお話をしますぞ
粗茶が美味しい
葵「して、喜一よ。さっきも言いはしたけれど、強さとは一朝一夕で習得できるものではありません」
喜「わがっでるよ…」
葵「何その喋り方、可愛くない」
喜「可愛くなくていいし!!!」
両手を上げ、ムキーッ!という音が聞こえてきそうな喜一を笑いながら見つつ…私はお茶をおく
一朝一夕で習得できるものではないし、力だけが強さなわけでもない
葵「…喜一、お前は私が最初からこれだけ戦える力を持っていたと…そう思いますか?」
喜「えっ、違うの」
葵「あるわけないでしょ、私はバケモノか何かか」
喜「えっ、違うの…プキャー」
失礼、思わず頭を掴み上げました
可愛らしい声をあげた喜一は顔を赤くしつつ、頬を膨らませながら私を見上げます。
当然のことだけど、私とて最初からこれだけ戦えてたわけじゃあない
確かに覚えは早かったって言われますが
葵「私だって、最初は戦い方なんてわかりませんでした。でも…私の場合はやらざるを得ないというか、戦うしか選択肢がなかったんですよ」
喜「……葵も、今の俺みたいに沢山稽古したってこと?」
葵「…稽古か。稽古もしましたね」
喜「?稽古もって?」
こちらを見上げる喜一に対し、一瞬だけ考えるように口を紡いでしまった。
考えるというか、言葉を選ぶというか
確かに幼少期から稽古を積んできて、基礎を叩き込まれ、タコ殴りにされたこともありましたし…今私が教えていることとなんら変わらない。
変わらないけれど、一つだけ…違うとすれば
葵「…やらなければ、やられる。それが当たり前の世界だったんですよ」
喜「…そ、か」
ポロリと漏れそうになった言葉を飲み、湯呑みを握りながら笑って言えば…喜一は静かに視線を落とした
多分、今のは伝わったかもしれない
言おうとしたことを言わないでいる私に、きっと気づいているだろう喜一は…何も言わないまま私に寄りかかった
……喜一の戦う理由と、私の理由は…あまりにも、違いすぎると感じたんだ
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