666人が本棚に入れています
本棚に追加
/250ページ
「…っあああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
葵「っ……!」
大通りに出てきた私は、それらしい影を見つけることができないまま走り続けていた
色んな人に聞き回り、それのみを手がかりにして漸く目星がついたのは…大通りの先にある無人の寺で
階段の下についたと同時に聞こえたその声は、子供特有の…少し高い声だ
葵「喜一!!」
悲痛な声に焦る私は勢いよくその階段を上り、すぐ先にいた男めがけて刀を振り下ろそうとする
グラッ…
葵「……は?」
が、刀を振り下ろす前に倒れこんだ男を見て…私は咄嗟に一歩下がった
倒れこんだその男の胸元には赤い鮮血が滲んでいて、よく見ると周りにも何人か…同じように倒れこむ姿が目に入る
……何が、どういうことだ
「……葵…?」
葵「喜一!?一体何が……」
倒れる姿の中に、探している人物が見当たらないと見回していれば…その声は背後から聞こえてくる
キィン…!!!
無事でよかったと、そう思いながらその目を向けた直後…目の前に振り下ろされた光るそれを、咄嗟に受け止める
光るそれ……刀を振り下ろしてきたのは、紛れもなく喜一なのに、その顔は酷く辛そうな表情を浮かべていた
喜「……葵、俺……やっぱり、だめだったよ」
葵「……喜一?何が」
喜「やっぱり……俺じゃ、誰かを守るのは…出来ないよ」
全身傷だらけで、きている服を真っ赤にしている喜一を見て…早く怪我を治さないとと考えたが、その伸ばした手から一歩離れる喜一
なんで、今そんな話をするんですか
葵「…巻き込んでしまって、本当にすみません。怖い思いをさせて…ごめんなさい。でも、無事でよかった。だから…話の続きは、後でしま」
喜「もう、いいんだよ。話したって、変わらないじゃん」
葵「……どういうことですか」
刀を下ろす私を見ても尚、手に持つ真剣を構え続ける喜一は…見たことのない目で私を見ている
こんなことに、巻き込んでしまったから?
私があの時、あの選択をしたから?
なにが、どうして……そんなに悲しい目をするんですか?
真っ直ぐと向けられる、悲しい色をしたその瞳の意味が…私には理解できなかった
最初のコメントを投稿しよう!