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彼女はまだ待っている。
コスモスがそれを語っている気がする。
彼女は花占いを相手してくれないとき不機嫌になった。
そしてやってくれと執拗に迫ってきた。
花びらの欠けたコスモスはそんな彼女自身なのかもしれない。
さらに、僕はさっき彼女に、駄々をこねてもよかったのに、と言った。
迫ってきたコスモスはそれをすぐに実行した彼女の姿なのかもしれない。
彼女はまだ待っている。
僕は涙を拭って、土のついた膝を払って立ち上がった。
そして振り返り、今来た道を戻っていった。
彼女から逃げた、逃げ続けた道を戻っていった。
もう逃げないと心に決めながら。
コスモスはもう花びらを落とさなかった。
ただし、涼しげな秋風がその花びらを空高く攫っていった。
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