若葉の温度

6/29
782人が本棚に入れています
本棚に追加
/421ページ
   ずっと恐れていた事が、とうとう現実になってしまうなんて……。 悪い方向にばかり考えてしまった僕は、その夜はあまり眠れませんでした。 ☆☆☆☆ 淕さんと約束を交わした今日は日曜日。天気は快晴。 それなのに……僕の心は曇っていた。 いやっ、もう曇りを通り越して、ザーザーと雨が降っているのかもしれません。 その訳は……昨日から悩み続けた、淕さんとの別れ話が実現になるかもしれないからです。 いつも、僕を幸せな気持ちにさせてくれる淕さん。 でも、今日に限っては……淕さんに会うのが、怖くて仕方ありません。 一歩足を進める度、その事ばかりを考えてしまい、いつもは短く感じる淕さんの家の道のりが……今は長く感じられます。 しかし、そう思うのは気分だけで……実際、時間にしてみれば、淕さんに言われてた時間よりも、少し早めに着いてしまっていました。 色んな思いが交差する中、一度深呼吸をした後、呼び鈴に手を伸ばして鳴らす。 ――ピーンポーン 『はーいっ。若葉です』 すると、直ぐにインターフォンから、淕さんの声が聞えてきました。 一瞬、それに対して声が出なかった僕ですが、一度咳払いをしてから口を開きました。
/421ページ

最初のコメントを投稿しよう!