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どうやら……淕さんは自分の容姿に、コンプレックスを持っているそうです。
僕からすれば、悩む事なんて何も無いと思うんですが……。
少し可愛らしいこの容姿が、女の人に間違われてしまう事があって、それが本人は嫌なんだと、以前言われてました。
まぁ……僕も、初めて会った時、淕さんを女の人と間違えてしまったのですけどね。
「香坂、とりあえず中に入れば?」
照れていたのも束の間で、淕さんがドアを開いて僕を招いてくださいました。
「はい。お邪魔します。それにしても、早く着すぎましたね。もう少し時間をつぶしてから来たら良かったですよね?」
「いいよ。そんなに気にしなくても。じゃ、二階へどうぞ」
エプロン姿の淕さんに誘導されて、僕は部屋にお邪魔しました。
「香坂、適当に座って待ってて」
「はい」
初めてここへ来た時、僕は玄関前で蓮美君が淕さんの頬にキスしたのを目撃して、嫉妬してしまったんだった……。
今となっては、懐かしい……。
――ガチャ
「お待たせ。紅茶しかなかったんだけど……飲める?」
「はい。僕はなんでも……」
再びエプロン姿で現れた淕さんが、お茶を持って来てくれた。
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