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暫くしてから、淕さんの声が聞えてきました。
「目、開けてもいいよ」
言われたとおりに瞑ってた目を開ければ、そこには……。
「あ、これは……」
「香坂。誕生日、おめでとう!」
目の前には、火が灯された蝋燭が立てられているケーキがあった。
そして、向かいにはその明かりから覗く、淕さんの嬉しそうな顔。
「り、淕さん……。このケーキは一体……え? た、誕生日?」
「香坂、落ち着いて。このケーキなんだけど、オレが作ったんだ! 作り方なんて分からなかったからさぁ……楓に頼み込んで、この一週間で教えてもらってたんだよ。どうしても、香坂の誕生日に間に合わせたくてなっ」
「そう……だったんですか。だから……」
この一週間、一緒に帰れないと言ったんですね?
全ては、僕の為に……。
「あっ、有難うございます。本当に、嬉しいです」
胸に、温かい物が流れ込んできた。
こんな気持ちになったのは、淕さんだからこそだ……。
「へへっ、良かったぁ……喜んでくれて。あっ、でも……味は、あんまり自信ないかも。だからお礼を言うのは、食べてからな?」
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