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「そんなの、関係ありませんよ。淕さんが僕の為に作ってくださったんですから、僕はそれだけでも喜んで食べますよ」
「うん。でも……」
僕が喜んでいるのを見て、淕さんは照れたように顔を背けた。
「それでは、いただきます」
蝋燭の灯りを吹き消し、ケーキを食べる為にフォークを持って突き刺した。
まだ夕方で真っ暗ではなかったからか、蝋燭の灯りが消えてしまっても、淕さんは部屋の電気をつけなかった。
ただ、ジッと僕がケーキを口に運ぶのを見つめていたので……僕はそのままケーキを口に放り込む。
「どう? 美味しい?」
「えぇ、とっても美味しいですよ」
口に運んだケーキは、淕さんがこの一週間の努力が実っていて、本当に美味しいものでした。
淕さんの気持ちが嬉しくて、つい笑顔が自然と零れてしまいました。
「良かったぁ~」
僕の言葉に安心したのか、ホッと安心した淕さんが急に脱力してしまいました。
その様子から、このケーキを作る為にどんなに大変だったのかが、改めて伺えました。
「淕さんも、食べますか?」
「え? ……そうだな。折角だし、オレも食べる」
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