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いつもの様にニッコリと笑った淕さんを見て、改めて別れ話じゃなくて良かったと、ホッとする僕がいた。
「では、こちらに来てください。向かいですと、ちょっと距離があって手が届きにくいですから……」
けれど僕は、淕さんが近くにいるという安心感を欲していた。
その思いから、淕さんをより近くで感じられるようにと、隣へ招いた。
「え……あ、そうだな」
淕さんが立ち上がり、僕の方へと移動してくる。
「それじゃ、香坂の隣に……」
言いながら、僕の隣に座ろうとした淕さんの腕を掴んだ。
「えっ?」
いきなりだったから、ビックリしてる淕さんの顔が直ぐそこにあった。
「どうせなら……ここに座ってください」
掴んだ淕さんの腕をそのまま引っ張ると、淕さんがバランスを崩し、僕の膝近くに倒れる形になった。
そこへ素早く向きをかえさせた僕は、強引に淕さんを自分の膝の上に座らせてしまった。
「えっ!? ちょ……香坂……」
一瞬の出来事で混乱している淕さん。
そんな淕さんを後ろから抱き締めて、僕は腕の力を込めた。
「だめ……ですか?」
「えと……あ、あのっ、は、恥ずかしい……から」
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